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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

株主総会の決議等による自己株式の取得

自己株式とは

自己株式とは、会社が保有している自社の株式のことをいいます。会社法が施行される以前は自己株式を取得することや保有することには一定の制限がありました。

現在は、原則として自由に自己株式を取得することができるようになっています。しかし、お金のない会社が自己株式を取得することが無制限に行うことはできず、分配可能額を超えて行うことはできないという財源規制が課されています(会社法第461条)。

自己株式を取得する方法

自己株式を取得する方法は、次のとおりです(会社法第155条)。

  1. 取得条項付株式の取得
  2. 譲渡制限株式の取得
  3. 株主総会決議による取得
  4. 取得請求権付株式の取得
  5. 全部取得条項付株式の取得
  6. 相続人等への売渡請求による取得
  7. 単元未満株式の買取請求
  8. 所在不明株主の株式の買い取り
  9. 端数処理による買い取り
  10. 事業の全部譲り受けの際に当該他の会社が有する株式の取得
  11. 合併消滅会社からの株式の取得
  12. 吸収分割会社からの株式の取得
  13. その他法務省令で定める場合
自己株式の無償取得

自己株式を会社が無償で取得する手続きについては、会作法その他関係法令で定められていません。

自己株式を無償で取得したとしても、他の株主の利益を害することはないため、業務執行の一環として取締役の決定等により取得することができ(対象株主の同意は必要でしょう)、株主総会の開催や決議までは必要とされていません。

株主総会の決議による自己株式の取得

上記1.~13.において、会社が自己株式を株主総会の決議によって取得する方法(上記3.)についてご相談をいただくことがあります。株主総会の決議によって自己株式を有償で取得するときは、どのような手続きが必要となるでしょうか。

(1)株主を特定せず全ての株主に機会を与える場合

特定の株主から自己株式を取得するのではなく、株主全員にその機会を与える場合の手続きは次のとおりとなります。

詳細については、こちらの記事でもご紹介しています。

≫株主を特定しないで自己株式を有償で取得する場合の手続き

①株主総会の決議

株主総会の普通決議により、次の3つの事項を決定します(会社法第156条)。

  1. 取得する株式の数
  2. 株式を取得するのと引換えに交付する金銭等の内容及びその総額
  3. 株式を取得することができる(1年を超えない)期間
②株主総会の決議(取締役会設置会社は取締役会の決議)

上記①が決まったら、株主総会の決議(取締役会設置会社は取締役会の決議)により、次の4つの事項を決定します(会社法第157条)。

  1. 取得する株式の数
  2. 取得する株式1株に対し交付する金銭等の内容・数or額orその算定方法
  3. 株式を取得するのと引換えに交付する金銭等の総額
  4. 申込期日
③株主に対する通知等

上記②で決定した事項を株主に通知します(会社法第158条)。公開会社は、通知に代えて公告をすることもできます。

④譲渡しの申込み

上記③の通知等を受けた株主が、株式の譲渡しの申込みをするときは、譲渡する株式の数を明らかにして申込みをします(会社法第159条)。

なお、取得する株式の数を超える申込みが株主からあったときは、申込みをした株主は按分した株式数を会社へ譲渡することになります。

(2)特定の株主から自己株式を取得する場合

株主全員に株式を譲渡す機会を与えるのではなく、特定の株主から自己株式を取得する手続きは次のとおりとなります。

詳細については、こちらの記事でもご紹介しています。

≫特定の株式から自己株式を有償で取得する場合の手続き

①株主総会の決議

上記(1)①と同様に株主総会の決議を行いますが、それに加えて上記(1)③の通知を特定の株主に対して行うことも決議します。

この株主総会では普通決議ではなく特別決議が必要となり、また、当該特定の株主は議決権を行使することができません。

②株主総会の決議(取締役会設置会社は取締役会の決議)

上記(1)②と同様です。

③特定の株主に対する通知

上記(2)②で決定した事項を、上記(2)①で決定した特定の株主に通知します。

④譲渡しの申込み

上記(3)③の通知等を受けた株主が、株式の譲渡しの申込みをするときは、譲渡する株式の数を明らかにして申込みをします。

売主追加請求権

上記(2)のように特定の株主から自己株式を取得する場合は、他の株主には、自分も株式取得にかかる通知の対象と加えるように会社に請求する(売主追加請求権といいます)ことができます(会社法第160条第3項)。また、会社は株主全員に対して、売主追加請求権を行使することができる旨を通知しなければなりません(会社法第160条第3項)。

但し、次の場合は売主追加請求権は認められません。

市場価格のある株式

上場会社の株式等、市場価格のある株式を特定の株主から取得するときは、その対価が市場価格を超えないときは売主追加請求権は認められません。

相続人等からの取得(非公開会社)

相続その他一般承継により承継された株式を、当該株主から取得するときは売主追加請求権は認められません。

但し、相続人その他一般承継人が議決権を行使したときはこの限りではありません。

特定の株主からの取得に関する定款の定め

定款に、売主追加請求権を認めない旨の規定がある場合は、売主追加請求権は認められません。

会社設立後に定款を変更して売主追加請求権を認めない旨の規定を追加するときは、通常、定款変更にかかる決議は特別決議となりますが、特別決議ではなく株主全員の同意を得なければなりませんので注意が必要です。

≫株式会社の設立時に、特定の株主からの取得に関する規定を定款に定める


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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