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代表司法書士 石川宗徳の 所長ブログ&コラム

債権者保護手続きにおける、いわゆるダブル(二重)公告

債権者保護手続きと公告

吸収合併等(吸収合併、吸収分割又は株式交換をいいます)をするときは、吸収合併等をする方の債権者にも、吸収合併等をされる方の債権者にも大きな影響を与える可能性があります。

毎年赤字で、債務超過となってしまっている会社を吸収合併しようとする会社があった場合、その承継会社の債権者がこの吸収合併に対して何も言えないのであれば債権者の利益は著しく害されてしまうかもしれません。

そのため会社法には、債権者の利益を保護するために、吸収合併等をする場合、吸収合併等の両会社の債権者に対して、吸収合併等について異議を述べる機会を与える必要があると定められています(会社法第789条1項、会社法第799条1項)。

この手続きを「債権者保護手続き」といいます。

また、ここでは吸収合併等に関する債権者保護手続きを記載していますが、資本金の額の減少(減資)をするときも同様に債権者保護手続きが必須であり、件数的には吸収合併等より減資の方が多いかもしれません。

≫株式会社の資本金の額の減少(減資)手続きと登記

債権者保護手続きの方法

存続株式会社等(吸収合併存続株式会社、吸収分割承継株式会社又は株式交換完全親株式会社をいいます)及び消滅株式会社等(吸収合併消滅株式会社、吸収分割株式会社又は株式交換完全子株式会社をいいます)は、吸収合併等をするときは、次の事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別に催告をしなければなりません(会社法第789条2項、会社法第799条2項)。

  • 吸収合併等をする旨
  • 消滅会社等(存続会社等)の商号及び住所
  • 存続株式会社等及び消滅会社等(株式会社に限ります)の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
  • 債権者が一定の期間(1ヶ月以上)内に異議を述べることができる旨

債権者に対する各別の催告の省略する方法

知れている債権者が金融機関1社程度であれば催告をする手間は少ないかもしれませんが、仮に100社以上あると、個別にそれぞれ催告をする負担は小さいものではありません。

そこで、知れている債権者が多い会社や、債権者への催告漏れを心配する会社等においては、ダブル公告を利用することにより債権者への個別催告を省略して債権者保護手続きを済ませることがあります。

ダブル公告

上記のとおり、債権者保護手続きにおいては原則として知れている債権者には各別の催告をする必要があるところ、官報公告に加えて、定款の定めに従い日刊新聞紙による公告又は電子公告をした場合は、債権者に対する各別の催告を省略することができます(会社法第789条3項、会社法第799条3項)。

これを「ダブル公告」あるいは「二重公告」といったりします。

ダブル公告で債権者保護手続きを済ませる場合、債権者は通知を受けないため、官報や対象会社の公告媒体(日刊新聞紙・WEB)をチェックしない限り気付きませんが、それで手続き的には問題ないことになっています。

定款に定められている公告をする方法

官報公告に加え、定款の定めに従い日刊新聞紙による公告又は電子公告をすることが債権者への各別催告を省略することができる条件ですので、会社の公告をする方法を官報と定めている会社は、各別の催告を省略することができません。

会社の公告をする方法を官報公告としている会社が、ダブル公告により各債権者への催告を省略するには、債権者保護手続きをする前に会社の公告をする方法を変更しなくてはなりません。

会社の公告をする方法は定款の記載事項ですので、公告をする方法の変更は定款変更の手続きによって行う必要があり、定款の変更は株主総会の特別決議によって行います(会社法第309条1項)。

公告をする方法の変更と公告日

それでは、官報を公告方法として定めている会社が、日刊新聞紙を公告方法にすると定款を変更した日と同日に、官報及び日刊新聞紙において債権者保護手続きにかかる公告をすれば問題はないのでしょうか。

債権者保護手続きは、債権者の権利を保護するために行います。

会社が定款を変更したという事実は、変更をしただけでは第三者はそのことを知ることができませんので、債権者が会社の公告をする方法の変更をしたことを知ることができる機会は最低限必要と考えます。

そのため、債権者保護手続きにかかる公告が掲載されるまでに、公告をする方法につき定款変更及びその登記申請をした方がいいでしょう。

また、公告をする方法の変更の登記が完了するまでは、会社の登記簿謄本を誰も確認することができないため、公告掲載日の前日までには当該登記が完了していることが望ましいと考えます。

公告をする方法が官報以外でも個別催告をしてよいか

会社の公告をする方法が日刊新聞紙又は電子公告である場合、必ずダブル公告をしなければならないのでしょうか。

会社法第789条3項及び会社法第799条3項は、官報公告に加えて、会社の公告をする方法である日刊新聞紙による公告又は電子公告をした場合は、知れている債権者への各別の催告を省略することができるというものです。

つまり、会社の公告をする方法である日刊新聞紙による公告又は電子公告をせずに、知れている債権者へ各別に催告しても問題ありません(なお、官報公告は必須)。

債権者に対する各別の催告が不要な場合

ダブル公告を検討する前に、そもそも知れている債権者へ各別の催告が必要かどうかも確認します。

次のようなケースにおいては、債権者への催告は不要とされています。

債権者が一人もいない

債権者が一人もいなければ、当然債権者に対する各別の催告をすることはできませんので、する必要はありません。

ただし、債権者がいなくても官報公告を省略することはできませんので注意が必要です。

官報を登記申請書に添付しなければ、吸収合併等の登記は却下されてしまいます。

一定の要件に当てはまる吸収分割

吸収分割をする場合、吸収分割後に、分割会社の全ての債権者が分割会社に対して債務の履行を請求することができる場合は、分割会社においては、公告及び催告という債権者保護手続き自体が不要とされています(会社法第789条1項2号)。

ただし、分割型吸収分割における分割会社は、債権者保護手続き自体の省略をすることはできません。

≫組織再編において公告が不要の場合

債権者に対する各別の催告の省略できない場合

ダブル公告をしても、知れている債権者への各別の催告を省略できないケースもあります。

それは次のようなケースです。

吸収分割、新設分割の一定の債権者

吸収分割、新設分割において、分割会社の債権者で、吸収分割後に、分割会社に対して債務の履行を請求することができない債権者のうち、不法行為によって生じた債務の債権者に対しては、各別の催告を省略することはできません(会社法第789条3項)。

合資会社・合名会社の組織変更

また、合資会社・合名会社から株式会社へと変わる組織変更においても、各債権者への催告は省略をすることができません。

社員の責任が無限責任から有限責任へと変わるため、債権者への影響が大きいからです。


この記事の著者

司法書士
石川宗徳

代表司法書士・相続診断士 石川宗徳 [Munenori Ishikawa]

1982年4月生まれ。早稲田大学法学部卒業。
司法書士。東京司法書士会所属
(会員番号:7210、簡易裁判所代理業務認定番号:801263)

2009年から司法書士業界に入り、不動産登記に強い事務所、商業登記・会社法に強い事務所、債務整理に強い事務所でそれぞれ専門性の高い経験を積む。

2015年8月に独立開業。2016年に汐留パートナーズグループに参画し、汐留司法書士事務所所長に就任。会社法及び商業登記に精通し、これまでに多数の法人登記経験をもつ。

また不動産登記や相続関連業務にも明るく、汐留パートナーズグループのクライアントに対し法的な側面からのソリューションを提供し、数多くの業務を担当している。

RSM汐留パートナーズ司法書士法人では、
商業登記不動産登記相続手続き遺言成年後見など、
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